この記事では、 リスティング広告を出しても、プロに頼むんじゃなくて自分でなんとかしようっていう検索ユーザーが多い場合は、広告文をどのように工夫したらいいか?といった疑問に答えます。
今回は、「スズメバチの巣 駆除」という検索キーワードのGoogleでの検索結果の1ページ目を上から順に見てケーススタディーをしながら、主に以下のような項目について具体的に学べる内容となっています。
- 検索結果全体から、検索する人の立場で、そのニーズを広告文に網羅するのが理想
- 数字で訴求をする場合は他の広告文を定期的にチェックしておくことが必要
- プロに頼むのではなく自分でなんとかしたいというよくある検索者のニーズについて
- 関連キーワードからも広告文を改善できる
この記事は、約15年間リスティング広告を専門としてネット集客に携わり、中小企業診断士の資格を持つ石黒 文康がお届けします。
よく考えられた1位表示の広告文
まずユーザーは基本的には一番上から順に見ていくことになりますので、この分析記事でも検索結果の上から見ていきたいと思います。
今回は検索結果のトップに広告が3つ並んでいます。
まず一番上の広告文について。
青色のタイトル部分に、「高い技術で完全退治」という文があります。
通常はこういった業界の場合、値段とか速さというのを訴求しそうなものですが、この業者の広告文は、「高い技術」やその次の「専門家」という言い方を使ってプロであることをより印象付けようとしていることがわかります。
検索結果の下の方を見ていくとわかりますが(後ほど説明します)、蜂の巣駆除は自分でできるといった動画や情報がネットには溢れており、自分でやるのではなく、プロの技術でキッチリ駆除したほうがいいですよ、ということを伝えたかったのではと想像できます。
広告文の一番下のところに「小さい巣は自分で駆除OK?」というコンテツへのリンクがあるので、やはり自分でやるのではなくプロに任せたほうがいいよ、というコンセプトが伺える広告文になります。
他のコンテンツタイトルも教育的なコンテンツが用意されていて、信頼感を得るのに役立っていると考えられます。
つまり、この広告文は、リスティング広告を出稿しているライバルだけではなく、自然検索の結果全体を踏まえた、検索ユーザーの思考回路まで考えた広告文とサイトコンテンツだと言えます。
Google広告はサイトコンテンツも評価して広告文の表示順位を決める仕組みなので、検索ユーザーのニーズに関連するコンテンツがあるからこそ、広告文も上位に表示されやすいと考えられます。
そして特徴的なのが、黒文字の説明文の最初にある「ご近所様に被害が出る前に」のところです。自分が怖いだけじゃなくて、近所の方に被害が出たら大変だよ、ということを伝えてスマートに緊急性を伝えています。
また、このような発想の表現は現場を知るプロだからこそ気付けるニーズだと感じます。スズメバチに困っている人にリアルに響く表現だと思います。
説明文の細かい表現を見ていくと、実績や料金が具体的に数字で表現されております。この場合はたとえば「名古屋市」といった地域の表現を加えるのも良いと思います。
同じ訴求ポイントだと弱いほうが強い方の広告文を引き立てる
次のすぐ下の広告を見ると、なんと880円からといった広告が出ています。さらにその下を見ると、13000円~となっています。
値段を重視する検索ユーザー目線では、上から4000円~、880円から、13000円~とユーザーは見ていくことになります。
蜂の巣駆除は自分でやりたい人も多いことが検索結果からわかるので、そうなると価格が安いほうが良いと思うユーザーも多いはずで、この上の3つを見比べるユーザーは、2番目の880円のところまずクリックされると思います。
ただし、広告の仕組みを知っている人からすると、880円だと完全に割に合いません。
まず1クリックあたり少なくとも100円ぐらいはすると思いますし、交通費や人件費を考えると、本当に880円だったら赤字の垂れ流しです。(実際には少なくとも5,000円~10,000円くらいの料金にはなりそうです。。)
広告の視点からすると、とりあえず安くやってほしい人に広告文をクリックしてもらうための大げさとも言える広告表現だと考えられます。
クリック率が高い広告は、より上位に表示される仕組みなので、2番目の広告の実際の平均クリック単価はその下の3番目の広告よりもかなり安くなっていることも考えられます。
3番目の広告文については、すぐ上の広告文とどうしても比較されてしまうので、この13,000円~という価格が業界の適正価格だとしても、単純に高い!と思われて2番目の広告の引き立て役になってしまっている恐れがあります。
値段が安くないのに(あくまで広告文の比較では)、広告文の一番TOPに価格訴求してしまっているので、他との比較で自ら不利な状況にしてしまっている広告文と言えます。
ではどうすれば良いかを考えてみます。
価格で勝負できなければ、サービスの品質、もしくはいかに素早く現場に駆けつけて駆除サービスを完了させるか、と考えるのがセオリーとなります。
ですので、この3つの上位表示された広告文の戦いと考えると、単純な文字の組み換えとしては「最短60分」という価格ではなく緊急性ニーズに対応する文言を広告文のトップ青文字のところに持ってくると、上の広告とメインコンセプト差別化され急いでいるユーザーには優位に戦えることになります。
さらに、上2つの広告文の地域の具体性が曖昧な点を考えると、3つ目の広告文は「名古屋市内なら最短60分で到着」というように地名にもっと具体性を加えると緊急性ニーズとの相乗効果で説得力があがり、クリック率や成約率も上がって広告の費用対効果もより上がってくることが予想されます。
ハチの巣は自分でなんとかしたいというユーザー心理を広告文に生かす
上3つの広告文の下には、自分で工夫してハチを駆除したみたという動画や記事が並んでいます。
「スズメバチの巣 駆除」という検索ワードに対しては、You Tubeコンテンツを含め、自然検索の結果に出てくる検索結果のほとんどが蜂の巣を自分でなんとかするための情報です。このキーワードの検索ユーザーのニーズが、まずは自分で何とかしたいという人が多いとGoogleも判断しているようです。
これだけのコンテンツが並ぶと、最初はプロに頼もうとしていた人でさえ、自分でなんとかできるのではないかという思考になってきます。
画像検索でハチの種類も素人ながらある程度特定できますし、Amazonで防護服でも買ってやってみようかと思う人も出てきます。
そしてユーザーは動画を見たりAmazonで商品を検索しながら、たとえば防護服4,000円払うならプロにお願いするか~といった思考に行ったり来たりするようになります。
そういったユーザーは結局自分でやるかプロにまかせるかの判断を迫られることになります。
今回最上位に表示された広告文のように、こうした状況ではまずは値段やサービスの早さではなく、プロフェッショナル性を強調しつつ、自分で駆除する場合のリスクなども含めた広告文がより求められていると考えられます。逆説的ではありますが、検索ユーザーが問題としているのは自分でできるかどうかだからです。
自分で駆除する方法をYou Tubeで見て、なかなか大変だし危険かな、やっぱりプロにお願いするかというタイミングで広告を出すことになります。
ですから一旦、自分でやろうと情報収集の旅に出てしまったユーザーに、You Tubeやサイト向けのリマーケティング広告で自社サイトに戻ってきてもらうのも効果的です。
緊急ニーズのサービスには具体的な地名を
それではスマホでの検索結果の最下部に表示されていた広告についても考えてみます。
まず1番目ですが、私が名古屋市の昭和区で検索しているのにもかかわらず、
「東海市スズメバチ駆除」という広告文が出ています。
この場合は地元の強みを生かせる東海市と、少し離れた市場の大きい名古屋でキャンペーンを分けて、名古屋のキャンペーンには広告文に「名古屋市」と入れるべきです。
名古屋でも、東海市に近い南の方(港区、緑区、天白区、港区など)を地域ターゲットにして区単位の地名を広告文に入れる方法も考えられます。名古屋は名古屋で競合が多いと想定されるからです。
長くて伝わりにくい広告文と短くても伝わる広告文
次のさらに下の2つの広告文を見てみます。
「適正料金」と書いてありますが、これは業者側の発想からくるキーワードになりますし価格訴求ができるワードでもないので、あまり効果的とは言えません。この部分には、たとえばユーザーが気になりそうな「口コミ1位、年間実績3千件」といったワードを青色のタイトル部分に持ってくると良いでしょう。
一番下の広告文については、シンプルでよくまとまった広告だと感じます。
「名古屋市」という地名、「30分」という具体性、「4000円~」というお値打ち感、説明文でも「出張費込み」「再発保証」といったキーワードで安心感を感じられます。
関連キーワードにも広告文改善のヒントが
最後の関連キーワードも見ておくと発見があります。
「蜂の巣 駆除 戻ってくる」といったワードを見ると、駆除してもまたハチが戻ってきてしまうことに悩んでいる人が一定数いることがわかります。
こういった人には「再発保証」という文言が含まれている広告文がクリックされやすくなります。
また「料金、無料、高い」といったワードもありますので、検索ユーザーはできるだけ安く抑えたいというニーズが高そうです。
ここまで見てきたように、検索結果の1ページ目をくまなく見ることで、たくさんのヒントを得られて広告文の改善に役立ちます。
検索結果も刻々と変わっていきます。現在出稿している方は、ユーザー視点で定期的に検索結果を見てみることをおすすめします。
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